【撮影エピソード3】クランクインの頃:さくら祭り、和船、新内流し

 

お江戸深川さくらまつりの新内流し(大西みつぐ撮影)

深川のシーンの冒頭に登場し、本作のクランクインでもある「お江戸深川さくらまつり」の撮影エピソードです(ストーリーのネタバレはありません)。筆者は撮影に参加していませんでしたが、当時の写真やメモから撮影の様子をお伝えします。

クランクインは2013年の3月31日でした。しかし、実はそのひと月ほど前からようやく製作の準備を始めたばかり。主演の徳久ウィリアムさんに出演をご承諾いただいたのは3月に入ってからで、まだストーリーも構想の段階でした。にもかかわらず、いきなりクランクインとなったのは、桜がほぼ満開となり、地元深川出身で写真家として長年活動してきた大西みつぐ監督がよく知る風景であり、とりあえず桜を撮影するしかない!となったからです(笑)

2013年3月31日クランクイン当日の撮影風景

2013年は例年よりも早く桜が見頃となりました。しかし3月31日は真冬のような寒さに。写真からも当日の寒さがお分かりだと思います(お花見日和ではなかったですね笑)。左から、主演の伊宝田隆子、プロデューサーの東海亮樹、大西監督、一人置いて撮影の芹澤良克です。この初日は、このカメラの位置で、とても重要なカットを撮影しました。

「お江戸深川さくらまつり」は、門前仲町駅のすぐ近くを流れる大横川が会場です。さくらまつりらしい風景は、この2週間後に撮影しました。

2013年4月13日新内流し(東海亮樹撮影)

4月13日に再びさくらまつりの撮影を行いました。もうすっかり葉桜でしたが、とても良いお天気で撮影日和でした。さくらまつりでは、江東区が所有する和船を「和船友の会」のみなさんが操船し、一般の人が乗ることができます。深川ならではのお花見が楽しめます。普段は江東区の横十間川親水公園で活動していらっしゃいます。『小名木川物語』では、この2013年の春に初めて撮影させていただき、その後2014年、2015年にもそれぞれ全然違う状況で撮影にご協力いただきました。’和船が川に浮かぶ風景、そして和船を漕ぐ音は、本作の大きな魅力となりました。また別のシーンのときに、和船友の会と撮影エピソードをご紹介します。

さくらまつりに戻ります。船上で行われる「新内流し」も見どころの一つで、カメラに収めることができました。新内流しとは、江戸浄瑠璃の一流派「新内節」の芸人さんが花街などを「流し」(門付け)ていた習わしです。門前仲町にはかつて花街がありました。(平成の初め頃まで、辰巳芸者さんの姿がありました。)川風にのって新内節が聞こえてきた時代が、このときだけよみがえります。

さて、撮影の日は新内剛士(たけし)さんと新内勝志壽さんが奏者でした。ちなみに剛士さんのお父様は、新内節三味線で初の人間国宝となった新内仲三郎さんです。大西監督と撮影の芹澤カメラマンは新内流しの舟に併走して撮影を行いました。いかにも撮影風景ですよね! (新内剛士さんは2017年の本作公開後、新内多賀太夫を襲名されました。)

2013年4月13日(東海亮樹撮影)

この日の撮影は、春の光景としてしっかり生かすことができました。葉桜だったのを残念に思っていましたが、登場人物の心情と風景のシンクロという点で、結果オーライに。葉桜で良かった!とすら思えるようになりました。観た方なら、そういえばと納得していただけると思います。

さくらまつりの撮影から、汗と涙の4年間(笑)が始まりました。大西監督は、初上映会直前の2017年1月に、深川の地域情報誌「深川福々」(第45号)に次の一文を寄せています。

「2013年3月31日、黒船橋和船乗り場。(略)私たちの映画『小名木川物語』がここからゆっくりはじまった。まさか4年近くもこの自主映画にかかわることになろうとは、この時点で想像できた出演者やスタッフは一人もいなかったはずだ。それだけ私たちはただの「素人」だった。しかし、だからこその緩い動きで、その都度時間がある人たちが集まり、半日かかってワンシーンを撮ったり、(略)その経過する季節と時間そのものを丁寧に記録してきた。」

撮影エピソード、近日中に4回目を掲載予定です。いくつか、早く書きたいエピソードがあります。ですが、それらは作品の重要な要素でもありますので、まずは順を追って書き進めます。楽しみにお待ちください。

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