【撮影エピソード7】小名木川沿いで語り合うシーン1(ラスト近く)

ラスト近くのシーンの話題なのでネタバレばかりです。
作品をご覧になったらお読みください^_^

すでにご覧いただいていましたら、ぜひご一読ください!

スタッフ撮影の当日のロケ風景です。本文は写真の後から始まります。

 

 

 

今回は、「小名木川物語」をご覧になった方に最もお話したい撮影エピソードの一つです。ラスト近くで、「紀子」と老婦人が会話するシーンです。

撮影が行われたのは2016年の秋の終わり。クランクインから3年半が経過し、当時は編集と並行して追加撮影を行っていました。

このシーンは実体験に基づいています。東京大空襲の前日に疎開して難を逃れた女性が、約70年ぶりに深川を訪れたというのは実話で、「小名木川物語」のスタッフが、偶然その女性に出会って伺った話でした。それ以外の会話や場面の設定は脚色しています。

スタッフが女性に出会ったのは、このシーンを撮影する2年前の2014年8月、私達が深川神明宮の陰祭りでの神輿撮影を行っていた日のことでした。

当日は「進」が神輿を担ぐシーンや、着物姿の「紀子」の撮影のため、スタッフが総出で撮影チームに参加していました。午後3時か4時頃、まだまだ夏の日差しが照りつける時間帯に、私達は休憩を兼ねて深川神明宮に来ました。主役の2人と撮影隊が、境内で台本にはない撮影を始めていたとき(結局このシーンはボツとなりました)、2人のスタッフが木陰で休憩していました。

一人は、「紀子」の親友で、「進」の昔の恋人「由香」の姉役を演じた俳優の佐藤美佐子さんで、もう一人は進を演じた徳久ウィリアムさんの奥様の珠央(たまお)さん。

「真由美」役、佐藤美佐子(撮影:大西みつぐ)

佐藤美佐子さんは、当時まだ本作への出演が仮決定した段階で、この日はロケの見学に来ていました。先日、このときのことを改めて語ってくれました。

「私と徳久さんの奥さんは、
お神輿をしまっておく収納庫の近くにある木陰で
直射日光を除けて座っていました」

「何気なく、収納庫に近づいてのぞく
パステルカラーのストールをした
身ぎれいで小さなおばあさんがいて
にこにこしながら、
「あら、今はないのね(もしかしたら、「いらっしゃらないのね」)」というようなことを
私たちに何気なく話しかけられました」

「徳久さんの奥さんが、
『ちょうど今、祭りに出ていて担がれているのですよ』というようなことを
答えられたと思います。そこで少し、
神様が出かけているとか、そんなような会話が
あったように思います」

「私たち二人は、木陰に座ったままの姿勢で
見上げるかたちで、お話ししました。
だから、おばあさんの向こうは、抜けるような青空でした」

「そんな会話を少しだけして、
本当に穏やかに、にこやかなまま
「わたしね、」というような感じで

そこの小学校に通っていたこと、

疎開でこの地を離れたのだけど
その翌日に東京大空襲があったこと、

友人や先生たちがどうなったのかは
ぜんぜんわからない(知らない)こと、

疎開で離れて以来、今日初めて来たこと、をお話になりました」

「こちらは、『えーっ?えーっ?』と
驚きながらうかがっていたのですが

おばあさま自体は、
にこやかで穏やかで上品な感じのまま
悲しいとか、つらいこと、とか
そういう欠片は一粒もなく
ただ、少し久しぶりに訪れたことに対しての
高揚感があったような気もするけれど

なんというか、
なんの感情の乱れもなく
にこにこと話してくれました」

「私たちは、なんと受け答えしたでしょうか‥
おばあさまは、
もしかしたら「お話しできてよかったわ」みたいのことを
最後に添えられたかもしれません」

「お互いに挨拶をして
おばあさまはその場を
穏やかな歩調で離れていかれました」

「もしかしたら
少し懐かしそうに見回しながらのような感じも
あったかもしれません。
ただ、緑の葉がきれいだな‥と見やっていただけかもしれません」

「私たちはそれを
木陰で座ったまま
じっと見送っていました」

2015年8月本祭り時の深川神明宮(スタッフ撮影)

あのシーンはこのときの会話に基づいていたことがおわかりいただけたことと思います。

2人が老婦人と出会ってしばらく経った頃、作品の中で東京大空襲を取り上げるのか?取り上げるならどのように?という問いと向き合いました。そしてまもなく、いくつかのカットや江東区北砂にある東京大空襲・戦災資料センターのシーンを盛り込むことになりました。

実際に老婦人に出会った佐藤さんや主役の伊宝田隆子さんを交えた話し合いの中で、あの人のエピソードをワンシーンにできないかという話は早くから出ていました。しかし老婦人の役はプロの役者さんじゃないと難しいだろうということで大西監督やプロデューサーの東海ら製作担当者、このテーマに関心を持つスタッフの意見が一致。
そして、そのときはお願いできそうな人を思いつかなかったので後回しとなり、それからも何度か頭をよぎりつつも状況は変わらず、撮影をほぼ諦めかけていました。

本作は、出演者をスタッフの友人や知人、ご縁があった方にほぼ限っていて、これまで全くお付き合いのない俳優さんにお願いすることまでは考えていませんでした。また、空襲の体験者は深川にまだ何人もいらっしゃいますが、この役はしっかり台詞をしゃべっていただく必要があるので、お願いするのは難しいと考えました。

でもあるとき、ようやく一人、老婦人の役にふさわしい人を思い出し、撮影の実現に向けて動き始めました。佐藤さんと徳久さんが境内で出会ってから2年が経っていました。その2に続きます。

佐藤美佐子さん

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